詩集・句集・歌集– category –
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蜜蝋の花
影との対話から 存在そのものへ イラン・イラク戦争の 日常と空爆を 体験した少女が 言葉で 世界を取りもどす 自分にとって、天と地をつなぐのが、言葉であり、生の喜びを映す日の光のようであった。道々出会う、全てを受け入れ、そのままで、あるがように。そこにあるもの。 (「あとがき」より) 装画:甲斐大策 -
うさぎ飼い
幻想と生理が身体で溶けあい 気体となってふるえている ひそやかに、そして奔放に変容する私とわたしそのことばが弾ける第一詩集 言葉と身体との間に齟齬がないようにしたいと思う。でもそうはいかない。ときに、言葉を明け渡してしまった。だから、夜にはうさぎを飼う。感傷的にならず、じっと眺めている。うさぎはゲージの外よりも内... -
[完全版]石牟礼道子全詩集
詩を書いているなどといえばなにやら気恥かしい。心の生理が露わになるからだろうか。散文ではそうも思わないのが不思議である。 書いては隠し、隠しして来たような気がする。ようなという言い方には何も彼も曖昧にしたい気分がこめられている。やりそこなってばかり生きてきたからと思う。(「あとがき」より) -----------------... -
野村望東尼 姫島流刑記
筑前勤王党二十一人が自刃・斬罪に処せられた慶応元年の乙丑の獄。歌人野村望東尼も連座。糸島半島沖の姫島に流罪―― 野村望東尼は平野国臣ら勤王の志士と交流を持ち、高杉晋作を匿ったことでも知られる幕末の勤王歌人。本書は、望東尼直筆の稿本を翻刻し注釈を加えた流刑日記である。 「筆者が意図するところは次の三点である。 一つは... -
花の語らい
その日、その日目につく花を描いた花は記憶を呼び覚まし、思い出は花とともにあった 幼い日、母親の実家で沈丁花の陰に隠れ、むせかえる香りに包まれたことがありました。病気の祖父を見舞う里帰りで、従兄たちと〝かくれんぼ〟をしていたのです。沈丁花の季節を迎えるたびに、初めて嗅いだ香りと祖父のことを思い出します。 その頃... -
タプティ詩篇 時量師舞う空に
鸚鵡たちの知らない 朝焼染む密林の 風の窓を流れてゆく ヒトたち 詩という方法を問い、物語の時空へと侵入してゆく、ある螺旋の道。その問いとともに〈計測されてゆく存在の像〉が浮かび、旋回するホログラムの舞が始まる。 <「石風」No.26より抜粋> 鍵、もしくは羅針盤 詩人 渡辺玄英 読むというよりも、体験すると表現した方がふ... -
霞野
指先に かすかに萌す ムーン・エア タクトの先は 待つ虚空 霞野の中で不確かに揺れている現在。 その視界を飛び、やがて虚空へと翔るものたち、そこに萌し始める新たなツクヨミの調べ。 <「石風」No.26より抜粋> 詩集『霞野』の時空間 福岡国際大学名誉教授 ・日本近代文学会会員 井上洋子 「詩を論ずることは神様を論ずるに等しく... -
淵上毛錢詩集
「生きた 臥(ね)た 書いた」 水俣が生んだ夭折の詩人 伝説の海から鮮烈に甦る 二十歳で発病。病いの床に十五年。詩を見すえつつ、生の瑞々しさをうたう。 病床の淵上毛錢 (昭和17年暮頃 熊本近代文学館提供) -
馬毛島漂流
石油備蓄基地誘致、全島民の離島、企業による土地買収、大規模な「滑走路」工事……日米安保の渦の中で、〝漂流〟する島・馬毛島 種子島在住の元新聞記者が島に渡り、歩き、喰い、時には遭難して知った馬毛島の今を、短歌と写真を添えて伝えるルポルタージュ わたしの馬毛島通いには、渡世の旅に出してもらった故郷への恩返しと、どこか、親不... -
詩集 魂のぽわん
幻想的な物語性を持った散文詩は、人の暗部に潜んでいるものを浮かび上がらせる――。