月光の下、ヒロシの前に白ネコが現れた。神秘的な緑の目とカギしっぽを持つこのネコを、ヒロシはムーンと名づけた。
夏休みのある夜のこと、ヒロシはムーンに導かれて近所の花の隈古墳へ足を踏み入れる。古墳の石室はなんと古代の世界・伊都国へと通じていたのだ。そこでヒロシは王の娘カスナと出会い、王のしるしのまが玉をカスナの手に返すことを約束してしまう。こうしてヒロシとムーンの時間をこえた冒険が始まった。
はるか古代の戦乱に巻き込まれとまどうヒロシは、一方、現実の世界では父母との確執やゴルフ場建設による古墳の取り壊し計画でさらに悩みは混乱するばかり。
いわゆる現代っ子のヒロシは美少女を救い出す正義の味方と呼ぶには頼りない。だが、ヒロシが周囲の人たちの勇気や行動力に励まされ、少しずつ自力で試練に立ち向かう姿はかえって読者には身近で共感できる。1つの困難を乗り越えた後、力強い目で先を見つめるヒロシがさわやかである。
ムーンとぼくのふしぎな夏
定価:本体1500円+税 1996/07/07発行