さながら民族博物館で本物を見ているよう

「子どもの本棚」2006年12月号

 モンゴル遊牧民の男の子ジルの最初のうちは、まあるいかあさんのおなか、二番目のうちはとうさんの作ってくれたまあるいゆりかご、三番目のうちもまあるいゲル。このゲルで、四季の土地を巡る遊牧民の暮らしを、ジルの最初の一年間の成長に重ねた絵本である。
 作者ボロルマーは、1982年生まれの若い女性。モンゴル美術大学を卒業しウランバートル在住。十代から数多くの児童書・教科書に挿絵を描き、高く評価され、日本では04年に『モンゴルの黒い髪』で注目をあびた。なるほど、絵が素晴らしい。ゲルの中の様子、家具、生活雑具、民族衣装、髪型、そして家畜との暮らし等、頁をめくる毎に、さながら民族博物館で本物を見ている様な錯覚に陥る程、細かく丹念に描いてあり、圧巻といえる。
 さて、ジルの四番目のうちは、見渡す限りまあるく広がる大草原である大地。作者のモンゴルの文化や自然と共にある生活に対する愛情が画面から溢れる一冊。