ほんわかと暖かい読後感

「子どもと読書」2001年1月号

 絵本作家長野ヒデ子さんの初めてのエッセイ集である。長野さんは一九七八年第一回日本の絵本賞を受賞。以来、たくさんの賞を受賞し、子どもから大人まで多くのファンをもっている絵本作家である。
 この本の中には、長野さんが二十年の間に、新聞や児童文学誌などに書いたエッセイが、長野さんいわく、おもちゃ箱のようにあれこれぎっしり入っている。本の帯に「使いこんだ布のようなやわらかい言葉で」とあったが、まさにそのとおりで、文章の一行一行に長野さんの人柄がにじみでている。
 ひょんなことから、鎌倉にアトリエをかまえた話、そこで出会った人や自然と付き合うこと、出身地である愛媛県の海のことや同じ愛媛出身の児童文学者古田足日氏の講演会での出来事、秋野亥左牟氏が住む小浜島のようすなどなど、楽しくて読み始めたら止まらない。ほんわかと暖かい読後感が心地よい。
 そして、忘れてはならないのは、家族の一員であった猫のサラダのことだ。どんなにサラダを愛していたか、このエッセイ集や長野さんの絵本を見ればよくわかる。