かつて雑誌とは、私に「悪い」世界を教えてくれるものだった。黒々として危険な匂いがして、とても魅力的だった。『ヘヴン』(『ジャム』から改称)や『ウィークエンドスーパー』『ロック・マガジン』などがそうで、小ぎれいな大型書店では手に入らない。
 そこで健筆をふるっていたのが隅田川乱一(本名・美沢真之助、九八年、四十六歳で病没)だ。彼が四半世紀の間、さまざまな雑誌に書いたコラムと未発表原稿を集めたのが、この奇妙な表題の本である。
 本を開くと、たちまち七〇年代アングラカルチャーの世界に連れていかれる。扱われているのは大麻やドラッグの話であり、プロレスであり、パンクロック、現代文学、そしてオカルトや精神世界だ。彼がサブカルチャーを追究したのは、自由に生きるためだった。ストレートな熱気が伝わってくる。ああ、いまのポップ文化のほとんどは、すでに隅田川らによって先取りされていたのだなと思い、感動する。