書籍

南風

四六判上製191頁
978-4-88344-288-1
定価:本体価格1500円+税
2019/09/10発行
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南風
zeikomi
¥0円


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南風
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辺境の噴火湾が
小宇宙となって
ひとの世の
死と生を
映しだす
 
夕暮れ時になると、その男は裸形になって
港の町を時計回りに駆け抜けた――
 
第16回文藝賞受賞作、
著者幻の処女作が四十年ぶりに甦る
 
 
…………………………………………………………….
 
 
「きみは今日、孤独について話したな。だがこれから、きみはもっと孤独になっていくんだぞ」
 いいか覚悟しておけよ、と静かに言われました。
(文藝賞授賞式の後「文藝」の編集長から)
 
 予言は、みごとに的中しました。この四十年、わたしは日本文学のどこにも居場所がなく、ひっそり孤立していたようです。いまも孤独が深まっていくばかりです。
(四十年ぶりの「あとがき」より)
 

書評

復刊本の価値

始祖鳥

 絶版本の復刊は喜ばしい。特に作家の初期小説の復刊は新しく読者を広げるだけでなく、作家論を深めるためにも歓迎だ。
 一九七九年に文藝賞を受賞した宮内勝典の『南風』が、このたび九州の版元・石風社より新装復刊された。南九州の噴火湾の港町に、お盆の行事のために帰省した青年が、土地の記憶と死者たちに思いを馳(は)せる作品。文体はリアリズムだが、描かれた世界は土俗的な心象の世界。描写力にも富み色あせない。時代に置き忘れられた作品ではない。
 宮内は復刊本の「あとがき」で「四十年間、わたしは日本文学のどこにも居場所がなく、ひっそり孤立していたようです。」と述べ、いまも続く孤独の深まりを語る。この言葉をどう読むか。宇宙の深淵(しんえん)を知れば知るほど孤絶感が深まるように、文学の深奥を歩み続ける宮内の寂寥(せきりょう)と思えた。同時に四十年前と現代の文化状況の変化を感知した言葉だと理解した。ひとりぼっちは文学の特権である。俗事や組織のしばりがきついいまこそ、逆に「居場所がない」ことが光源となる。
 芥川賞受賞作品でも絶版はある。入手し難い書籍を読むことで現代文学の潮流や隘路(あいろ)が見えるのだ。宮内がその手本を示した。

宮内勝典

みやうち・かつすけ

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宮内勝典
zeikomi
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1944年ハルピン生まれ。鹿児島県立甲南高校校卒業後、アメリカへ渡る。ニューヨークで通算13年暮らし、世界60数カ国を歩いた。
早稲田大学客員教授、大阪芸術大学教授などを歴任。

著書『南風』(文藝賞)、『金色の象』(野間文芸新人賞)、『焼身』(読売文学賞 芸術選奨文部科学大臣賞)、『魔王の愛』(伊藤整文学賞)。ほかに『グリニッジの光りを離れて』、『ぼくは始祖鳥になりたい』『金色の虎』、『永遠の道は曲りくねる』など多数。



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