書評

香港玉手箱

香港玉手箱 ふるまいよしこ 石風社 香港 北京 広東語 中国語 ロック 写真 返還
239頁 四六判並製
4-88344-039-7
定価:本体価格1500円+税
1999/03/20発行
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香港玉手箱
zeikomi
¥0円


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転がりつづける町・香港から目を離すな! 香港在住10年の音楽や絵画・写真に造詣の深い著者がつづる熱烈歓迎辛口定点観測。

書評

立ち上がる「弾丸都市」の姿

飯沢耕太郎
写真評論家

 「この人はいったい何者?」というのが彼女と最初に会ったときの第一印象だった。一九九四年二月、香港芸術センターで開催された「中、港、台當代撮影展」のシンポジウム会場でのことである。
 中国、香港、台湾の写真評論家、雑誌編集者たちがはじめて顔をあわせ、熱っぽい討論を繰り広げていた会場を、彼女──ふるまいよしこさんは颯爽と動き回っていた。広東語、北京語を鮮やかに使いこなし、滑らかにその場の空気に溶けこんでいる。なにしろ、こちらは言葉がまったくわからないので、初対面の彼女の通訳で多くの写真関係者と知り合うことができた。
 その後、九六年に横浜、京都、福岡で開催した「香港変奏──香港写真の現在」展でも、現地コーディネーターとしてお世話になり、なんとか企画を成功させることができた。彼女の粘り強い交渉力と、筋を通すポジティブな実行力がなかったら、尖閣諸島(釣魚台)の問題で微妙な状況にあった展示自体が空中分解していたかもしれない。
 その彼女が『西日本新聞』に連載していたコラム(「香港交差点」=九四年十一月──九八年三月の文章をまとめた本書を読むと、いつも元気に飛び回っているように見える彼女も、けっこういろいろな矛盾や問題に直面し、それらをひとつひとつ、せいいっぱい体を張って切り抜けてきたことが分かる。「とにかく好むと好まざるとにかかわらずびゅんびゅんと前へ向かって走り続ける『弾丸列車』に乗って生活を続けているような感じなのだ」と彼女は書いているが、たしかに香港では時間が日本の二、三倍の速度で進むように感じられる。特に九七年の「中国返還」前後の時期の加速は凄いもので、その右往左往ぶりは本書からもいきいきと伝わってきた。
 僕にとって嬉しいのは、高 志 強、謝 至 徳、茫〓〓という三人の香港人写真家の作品が、文章の間にたっぷり使われていること。彼らの写真から、現在形の香港の姿が立ち上がってくる。

目次紹介- 抜粋 -


そして返還の日がきた
  中国度  祖国回帰  英語教育  返還の舞台裏  弾丸都市  ほか
パラダイス狂騒日記
  中秋節  隣町、深圳  家族の空間  地べたの美食ツアー  税金パラダイス  ほか

香港スクランブル
  赤い招待状とパスポート  香港ジゴロ  金、金、金  香港発台湾行き ほか
にっぽん、チャ、チャ、チャ
  プライドとキャリア  ブームの舞台裏  文化ゲリラ宣言  アジアの中の福岡 ほか
音楽世界
  中国ロックの神様、崔健  文化のボーダーライン

北京の夏

ふるまいよしこ

ふるまい・よしこ

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ふるまいよしこ
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ふるまい・よしこ

1962年岡山県生まれ。北九州大学外国語学部中国学科卒。
1987年に香港に移り住み、香港中文大学で広東語を学んだ後、雑誌編集者に。1993年から主にフリーランスの翻訳者、ライターとして文化活動の紹介を行なっている。その後、2000年からは北京にも居を構え、香港と北京を行き来しながら、中国の芸術、文化、庶民生活を中心に中国社会をレポートする仕事をしている。
著書に『香港玉手箱』『中国新声代』、訳書に『香港美食大神』がある。