書評

少年時代

少年時代 ジミー・カーター ジミー カーター 大統領 アメリカ 黒人 差別 ピーナッツ 南部 人生 記録 少年
378頁 四六判上製
4-88344-099-0
定価:本体価格2500円+税
2003/08発行
booktitle
少年時代
zeikomi
¥0円


An Hour Before Daylight. Jimmy Cartar

booktitle
少年時代
zeikomi
¥0円

米国ディープサウス(深南部)の小さな町。人種差別と大恐慌の時代。家族の愛に抱かれたピーナッツ農園の少年が、黒人小作農や大地の深い愛情に育まれつつ、その子供たちと共にたくましく成長する。
──このアメリカには「希望」があった──

書評

米国 もうひとつの核心

龍 秀美
詩人

 普通日本人はアメリカという国をなんとなく「知っている」つもりでいるが、政治・経済の中心地としての北部や東部の表面的な情報に偏り、精神的風土や歴史、特にあまり語られない南部のもつ、農業国としての重要性については理解が十分ではない。
 この本はジミー・カーター元アメリカ大統領が、少年時代を過ごしたジョージア州の田舎町での生活を綴ったものだ。
 カーター氏は文中で「自分の楽しみのために」書いたと言っているが本当にそうだろう。そして楽しく書かれた著作が持つ良質の情報を私たちはたっぷりエンジョイできる。このくっきりした輪郭の素朴派絵画を見るような書物には、今アメリカと共に私たちが陥っている迷路を解きほぐしてくれるヒントが満ちているのである。
 ここでは六十数年前のアメリカ南部の農家のさまざまな作業や生活の仕方が実に詳細に描かれていてこれだけでも貴重な博物誌だが、カーター氏の驚くべき記憶力と理解力は、彼を取り巻く人々の言動や身近な事件から当時の世相をありありと感じさせ、読者は楽しみながら自然にこの国のもうひとつの核心に触れることになる。
 やがてカーター氏は海軍士官学校を出てエリート軍人の道を歩き始めるのだが、父の死にあたって農場を継ぐ決心をする。戦争と平和を象徴する海軍と農業との究極の選択が、後の平和主義者カーター大統領を生むことになるのは運命の不思議と言えよう。
 そしてこの選択の背後には、南北戦争、人種差別問題、大恐慌などを含む長いアメリカの歴史が横たわっていることに私たちは気づかされる。
 営々と大地を耕す農業は平和を願う。この真理が後のカーター氏の身命を賭した平和運動になり、昨年のノーベル平和賞とも繋がっていったのではないだろうか。
 カーター氏の人道活動に注目し研究を重ねてきた飼牛万里氏(中村学園大学教授)による翻訳は、言外の意味にも行き届いた配慮が感じられ読みやすい。

目次紹介- 抜粋 -

1章 大地、農場そして私の故郷
2章 物納小作人の暮らし
3章 厳しい時代と政治
4章 子犬のような時代
5章 母と父
6章 プレインズのゆでピーナッツ
7章 農場での仕事
8章 人生についてさらに学ぶ
9章 ハイスクールの日々
10章 ジョージア州のカーター一族
11章 海軍かプレインズか 
* 関連年表

ジミー・カーター

じみー・かーたー

booktitle
ジミー・カーター
zeikomi
¥0円
じみー・かーたー

第39代(1977-81)米国大統領。
1924年ジョージア州プレインズ生まれ、その近郊の農場で少年時代を過ごす。
1962年、民主党からジョージア州上院議員に当選。1971年ジョージア州知事に就く。1976年、大統領選挙に当選。
その後は妻のロザリンと共にアトランタに設立した財団カーター・センターを中心に、平和や人権問題などに関して世界的な活動を行っている。2002年ノーベル平和賞受賞。
著書に『カーター回顧録』(上・下、日本放送出版協会)、『ジミー・カーターのアウトドア日記』(東急エージェンシー出版部)、『平和を語る』(近代文芸社)、『老年時代』(日経BP社)、『海のかいじゅうスヌーグル』(絵本、石風社)など多数。

飼牛万里

かいご・まり

booktitle
飼牛万里
zeikomi
¥0円
かいご・まり

上智大学外国語学部卒業。ヴィラノヴァ大学大学院(米国)留学。
福岡アメリカンセンター、駐日米国大使館、国連大学、福岡市美術館などを経て、自身の事務所グローバリンク代表。福岡アメリカンセンター時代にジミー・カーター元米国大統領夫妻訪日の際、ロザリン夫人及び令嬢エイミー・カーターさんの京都訪問を担当。現在・中村学園大学教授。福岡市在住。
主な訳書『おそれずに人生を』(ビリー・ハワード著、講談社)、『海のかいじゅうスヌーグル』(ジミー・カーター文、エイミー・カーター絵)『少年時代』(ジミー・カーター、どちらも石風社)