書評

この道一筋

この道一筋 高校ボクシング指導者の横顔 リング ボクシング 高尾啓介 石風社 写真集
A4判並製122頁
978-4-88344-153-2
定価:本体価格1800円+税
2007/11/20発行


高校ボクシング指導者の横顔

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この道一筋
zeikomi
¥0円

昭和50年代から平成19年青春佐賀総体まで、その拳ひとつで親子以上の信頼を築きあげてきた指導者と生徒たちの、四半世紀に及ぶ情熱と激闘の記録。──リングに刻む子弟の絆。

書評

ボクシング、その心の強さ

岩田直仁
西日本新聞記者

 一九八七年、全国高校総体ボクシング大会が札幌市で開催された。注目選手はライトフライ級に続いてライト級制覇を狙う豊国学園(福岡県)の鬼塚勝也。準決勝でその夢を絶ち切ったのは、徳島の生徒だった。後に鬼塚はWBAスーパーフライ級王者に、徳島の川島郭志はWBCスーパーフライ級王者になる。高校ボクシング史に語り継がれる勝負である。
「二人とも学生時代から抜きん出た選手でした。でも、高校、大学でボクシングに青春を賭けたほとんどの選手は、大きな脚光を浴びることもなく、リングを去っていくんです」
 自らもそんな名もなきボクサーだった。佐賀市大和町の出身。地元・龍谷高校でボクシング部に入り、推薦で中央大学へ。ヒットアンドウエイが得意なサウスポーのボクサータイプ。「周囲から『おまえは左腕一本で大学に行った』と冷やかされたもんです。とはいえ、プロで食っていける才能なんて、誰にでもあるわけないじゃない」。大学卒業後に就職したが、すぐに退職。満たされない心を抱えたある日、新聞記者の父から譲り受けた一眼レフを手に、出掛けたのは後楽園ホールだった。
「後輩の写真を撮ってやろう、という軽い気持ち。そんな写真をボクシング雑誌に持ち込むと、買ってくれた」。転機になった。八三年から高校ボクシングに対象をしぼり、国体、インターハイ、全国高校選抜などに足しげく通ううちに写真家として認められ、拳を交わす選手だけでなく、リングサイドの指導者にほれ込んでいった。
 この本には「高校ボクシング指導者の横顔」というサブタイトルがある。鬼のような形相で叱咤する男がいれば、おおらかな笑顔で見守る男もいる。「癖がある人が多いし、魅力も人それぞれ」。ただ一つだけ、共通点がある。「絶対にあきらめない心の強さ。それを生徒に伝えようという思いです」。モノクロ写真の中の男たちの顔には、張り詰めた精神と奥行きのある優しさの両方があふれている。
 東京と郷里の佐賀を行き来しながら、写真教室などの講師を務める。これが記念すべき第一冊となる。四十九歳。

作品貫く「無償の情熱」

後藤正治
ノンフィクション作家・神戸夙川学院大学教授

 高校ボクシングの世界を撮った写真集『この道一筋』が刊行された。まず特記すべきは、昭和50年代から平成19年の佐賀総体まで、四半世紀をかけた仕事であることであろう。リングサイドで、ヘッドギアをつけた高校生部員と、部員に覆いかぶさるようにアドバイスするオジサン指導者のツーショットが数多く収録されている。
 写真家は高尾啓介氏。氏とは面識がある。西宮市にある定時制高校ボクシング部の顧問教諭と部員たちを追った拙著『リターンマッチ』の取材中、相前後して高尾氏も取材に来られていたからである。
 写真集には、この顧問教諭もアップで撮られている。部員へのいつくしみというのか、深みのある表情は何度見ても飽きない。写真家にとって〝この一枚〟といえる写真であろう。他にも印象深いワンショットが幾枚もある。
 見終わって浮かんだのは〈無償の情熱〉という言葉であった。高校ボクシングはマイナースポーツである。部員も指導者もボクシングに打ち込むことによって目に見える見返りが得られるわけではない。それでも彼らはリングという場に魅入られ、熱い時間を過ごしていく。その中で、思わぬ自己表現や生の発露を行っていることが読み取れるのである。
 著者略歴によれば、高尾氏は大学時代、ボクシング部員であったとか。長期に及ぶ仕事は氏の青春の決算にかかわる部分もあったのだろう。
 この写真集の作品性は、高校生と指導者と撮り手の、いずれも無償の情熱という共通分母によって支えられている。

目次紹介- 抜粋 -

リターンマッチの男 兵庫県・脇浜義明
リングの職人「袰巖一門」 大分県・袰巖秀勝
一行三昧に生きる 神奈川県・海藤晃
情熱と人情の「小林組」 千葉県流山高校・小林信次郎
優しき武闘派教師 東京都駿台学園高校・木下英雄
運命に生かされたリングの魔術師 岩手県・佐々木達彦
伝統を積み重ねて〝関東の雄〟 栃木県作新学院高校・川島八郎
南国・鹿児島の指導者たち 鹿児島県・新宮馨ほか
沼津の貴公子 静岡県沼津学院高校・堀内敬三
雄飛 福岡県東福岡高校・佐々木正明
戦う先生 長崎県小浜高校・古賀嘉朗
火の国の熱き指導者魂
宮崎に日章あり 宮崎県日章学園高校・菊池浩吉
  ほか

高尾啓介

たかお・けいすけ

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高尾啓介
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¥0円
たかお・けいすけ

1958年佐賀県佐賀市生まれ。龍谷高校〜中央大学と選手としてリングに上がる。 1982年、後楽園ホールよりアマチュアボクシングの撮影を開始。1990年、東京都目黒区に(有)フォトグラフオフィスタカオ設立後、書籍・雑誌その他印刷媒体等で活動。1996年より(有)オフィスタカオとして活動。JPS日本写真家協会会員。著書に『この道一筋〜高校ボクシング指導者の横顔』『メダリストへの道〜五輪に挑むボクサーたちの肖像』(以上石風社)などがある。