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祖国 戦場 ビルマ 根本 百合子 ささやき 石風社 聞き書き
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祖国を戦場にされて
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祖国を戦場にされて

ビルマの人々が紡ぐひかえめな言葉の中から、日本軍と英印軍の姿が影のように浮かび上がる──。故郷の村を故なき戦場とされた人々は、その時何を見たのか? 六年の歳月をかけて綴る、ビルマが見たビルマ戦

  • 四六判上製324頁
  • 4-88344-060-5
  • 定価:本体価格2000円+税
  • 2000/07/01発行
井上岩夫 詩人 鹿児島 小説 カキサウルス 石風社 豊田伸治 全集 宮内勝典
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井上岩夫著作集[2]小説集
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井上岩夫著作集[2]小説集

兵士にとっての「戦争」を、自意識の劇の過剰のなかに描き切る。──ひとりの詩人が、現実への深い拒絶と孤絶の果てに、知の狙撃兵となって「世界」を再創造する。「『カキサウルスの鬚』を読み、私は愕然とした。揺るぎない存在感にショックを受け、青ざめた。…小綺麗になった土地や時代の、その地層の最深部から、風化することを拒む一つの意思が恐竜のように起ち上ってくる気がしたのだ。」(宮内勝典・作家)

書評

「生き返った恐竜」に会う

宮内勝典
作家

 井上岩夫という詩人がいた。九州一円では知られているけれど、いわゆる中央詩壇とは無縁のまま、権威に対してひっそりと背を向けて生きつづけた詩人だった。古本屋、看板かき、印刷屋などを営みながら、市井の片隅にあって反時代的な姿勢をつらぬいた。

 作家・島尾敏雄は、彼についてこう記している。
 「目が鋭く光ってすべてに拒否的な気配が漂っていました。(中略)しかし彼の目の底では静かなやさしさが、表現の方法を見つけ得ずにはにかんでいることを隠せないのです。(中略)孤島の岩の上の俊寛のような彼の悲しげな目。しかし私の胸の中に焼きついているのは無口な彼の在りようです。薩摩の風土にまみれてその穴からじっと世界を伺っている目」
 まったくその通りで、これ以上つけ加えるべき言葉は何もいらない。ただ親子ほど歳のちがう者から見た印象だけを補足しようと思う。出会ったのは二十年ほど前、鹿児島市・天文館通り裏の居酒屋だった。世の中は明るく繁栄しているのに、戦時中の不発弾のようなものがそこにごろりと存在して、過去をそんなに簡単に忘れていいものかねと言わんばかりに、目を光らせている気配だった。しかも、生半可なインテリを毛嫌いしつつ、市井の片隅にひそんでいる狷介な初老の男……。
 初対面のその日、私たちはつかみかからんばかりの激しい口論となった。彼にとって私はチンピラの駆け出しであり、私のほうは屈強な父親世代に初めて全力で挑めるような高ぶりを感じていた。その出会い頭の喧嘩の後、私たちは知己となった。

 彼の小説はぶっきらぼうで、ごつごつとして読みづらかった。だが戦中派の父たちの胸の奥底にどんな思いが秘められているのか、ついに納得できた。そして私は、こう記した。
 「『カキサウルスの鬚』を読み、私は愕然とした。揺るぎない存在感にショックを受け、青ざめた。上っ面だけのっぺり小綺麗になった土地や時代の、その地層の最深部から、風化することを拒む一つの意思が恐竜のように起(た)ち上がってくる気がしたのだった」
 決して、お世辞ではなかった。不発弾にひそむ、まだ湿っていない火薬をじかに舌で味わってしまったような狼狽を感じたのだ。そして私は『カキサウルスの鬚』の作者・井上岩夫を恐竜になぞらえて、心ひそかに「イワオサウルス」と名づけた。頑固親父め、と呟きたくなる困惑と、深い畏れを込めて。
 最後に会ったのは一九八二年、早世した息子の墓参りに帰郷したときだった。まったくの偶然だが、彼は、私の息子の墓がある鹿児島市の唐湊に住んでいた。
 桜島の噴煙が見える墓地の道を、妻と私は茫然としながら下り、竹林のような仮住まいを訪ねたのだった。そこは伴侶を失ったあとの彼の隠れ家であり、仕事場でもあった。いかにも隠者の住まいらしく、殺風景で何もなかった。ただ机の上に草稿が積まれていた。その日、彼は無口だが、たとえようもなく優しかった。黒々と光る目が、子を失ったばかりの若い夫婦を慈しんでいた。それでも私は、恐竜「イワオサウルス」がまぎれもなくそこに居ると感じて正座していた。

 その後、私はアメリカに移り住み、再会する機会もないまま年月が過ぎていった。訃報に接したとき、彼の仕事が埋もれてしまうのではないかと、歯ぎしりするような無念な思いがあった。
 だが、それは杞憂だった。没後五年たって、福岡市の石風社から『井上岩夫著作集』が刊行され始めたのだ。函入り大判で、五百ページを超える大著だった。壮挙だと思った。けれど出版不況の時代だから、第一巻だけで終わってしまうのではないかと危ぶんでいた。ところが二年後の今年、ついに第二巻の「小説集」が出た。私を身ぶるいさせた『カキサウルスの鬚』も収録されている。
 恐竜「イワオサウルス」は二〇〇〇年に生き返ってきたのだ。私は嬉しくてたまらず、二冊の本を重ね、その上に夏蜜柑を供えた。

生気に満ちた人間描く

前山光則
作家

 鹿児島市に住んで詩人・作家として活躍していた井上岩夫氏が亡くなって、七年経つ。早いものである。
 この著作集第二巻には長短編合わせて九編の小説が収められている。そのうち、「ごはんさんで」「衛門」「カキサウルスの鬚」「下痢と兵隊」「雁八界隈」は以前読んだことがある作品だが、以前も今回再読しても一番印象に残るのは「カキサウルスの鬚」である。
 大隅一人と小松松造という二人の男が物語の中心で、二人は互いに「カズトサア」「マッチャ」と呼び合う幼馴染み・親友だ。しかも、共に戦争で受けた心の傷や故郷での濃密な人間関係を引きずって日を送る。特にカズトサア大隅一人は、抱え込んでいる心の荷物が重すぎるがゆえに「カキサウルス」とか「デバマネキ」というグロテスクなものを幻視してしまうのだ。終いには、大隅一人は鹿児島での「荷物」の一切を振り捨てるようにして東京へ出て行く。良い歳した男が、である。人間たちはこんなにも深く心を通わせ、しかしながらすれ違い、一人一人生きるしかないものなのか、と溜め息が出てしまった。
 せまい町内での人間関係を描いた「葱」、軍馬に執着する男の話「さくら」、「餅菓子みたいなおばさん」が登場する「少佐の妻」、算数が天才的に得意な少年と言葉が喋れない母親とを物語った「四枚の銅貨」、この四編には初めて接した。それぞれ名品である。
 井上岩夫氏の小説には正直者、頑固者、ずる賢い奴、可愛い人、みっともない連中、等々、さまざまな人物たちが出てくるが、皆、人間としての輪郭をしっかり持ち、生気に満ちている。「報復から逃げおおせる為なら郷里も妻子も捨てる程の小心者である男に、鶴嘴を斜に振りかぶらせたのは何だったのか。わからんと言っても、わかると言っても嘘になる「(「カキサウルスの鬚」)、──「わからん」と「わかる」の間に身を屈(かが)め、人間に対する興味・関心を根強く持ち続けたからこそ、こうした読み応えある作品群を残し得たのではなかろうか。

鬼才の密度濃い「前衛」

渡辺京二
評論家

 歳月を重ねるにつれて、光芒を放つであろう小説集一巻がここに在る。
 著者は七年前に物故された鹿児島在住の詩人であるが、詩において、極度に凝縮された喩の切れ味と、時代を透視する思想的含蓄の深さによって、戦後詩史の一ページを飾るにたる業績を残されたばかりでない。氏は戦後どの作家も書くことがなかったような、高度に知的でしかもくるめくように豊醇な一群の小説の書き手でもあった。
 そのすべては鹿児島や熊本の雑誌に発表されたので、いまだ知られざる作家にとどまってはいるが、この一巻を読む者は、井上氏が戦後文学の中でも、ひときわ光彩を放つ一鬼才だったことをうべなわずにはおれぬだろう。
 氏の代表作は、かつて弓立社から一本として刊行された『カキサウルスの鬚』と『衛門』だろう。前者は七〇年代初頭の鹿児島を舞台として、悪夢のような戦争体験と屈折した土俗的情念をないまぜた力作であり、後者は日中戦争中の時代の暗鬱な照り返しを背景とする、近親相姦的恋愛の物語である。
 つまり氏の小説には、戦争と軍隊という日本人の巨大な経験が夢魔のようにのしかかっており、その意味では戦後文学的といっていよいし、そのような経験の処理のしかたが知的な屈折を極めている点では、昭和十年代の自意識の文学に系譜づけることもできる。
 しかし、氏の作品が戦後文学の主流をなす知識人文学にとどまるものでないのは、そのすべての隅々から、ムラの土俗のむせ返るような濃密な相貌が立ち現れることによって明かだろう。このようにムラの土俗が知的な格闘を通して思想的象徴にまで高められたのは、まさに氏のみがなしえた壮観であった。
 さらに氏の小説は仕掛けと謎にみちている点でも、まさに前衛的である。氏の小説においては、事実も筋も主題も幾重も目くらましをかけられていて、読者は密度の濃い言葉に酔わされながら、絶えず知的挑戦を受けることになる。すなわち小説読みにとって、この一巻は生涯幾度とは出会えぬ一壷の美酒なのである。

  • A5判上製函入517頁
  • 4-88344-065-6
  • 定価:本体価格5000円+税
  • 2000/06/30発行
海のかいじゅうスヌーグル ジミー・カーター 絵本 かいじゅう 障害者 障害 障碍 ジミー カーター エイミー 飼牛 万里 アメリカ 大統領
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海のかいじゅうスヌーグル
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海のかいじゅうスヌーグル

ジミー・カーター元アメリカ合衆国大統領が、若き日、幼い愛娘に語り聞かせたお話が、愛娘エイミーさん自身の絵によって絵本になった! 足の不自由な少年ジェレミーとちびっこかいじゅうスヌーグルの愛と勇気にみちた海辺のファンタジー絵本。

  • A4判変型 32頁
  • 4-88344-055-9
  • 定価:本体価格1500円+税
  • 2000/06発行
わたしの天職 北九州おもしろ人間帖 西尾秀巳 石風社 北九州 筑豊 京築 仕事 ライフワーク
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わたしの天職
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わたしの天職

──庶民、あなどるべからず──。不況も世間もどこ吹く風。今日もひたむきに、自らのライフワークを究めつづける、北九州・筑豊・京築の、一筋縄では行かぬ個性派84人の履歴書。「わしゃ、この仕事に誇りばもっちょるよ」

  • 194頁 四六判並製
  • 4-88344-058-3
  • 定価:本体価格1500円+税
  • 2000/04/30発行
古川嘉一詩集 古川嘉一 前山光則 石風社 詩集 熊本 八代 始終 淵上毛錢
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古川嘉一詩集
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古川嘉一詩集

熊本県球磨川の河口、不知火海の岸辺に発火した魂が、時を超え結実する。五十年後の処女詩集。復員後淵上毛錢を訪ね、毛錢と詩誌「始終」を刊行。死を目前にした2年間の詩作品50篇に生を結晶させる。

  • 100頁 A5判上製
  • 4-88344-057-5
  • 定価:本体価格2000円+税
  • 2000/04/20発行
わくわくどきどき Ⅰ

「ねえ、おはなしよんで」。子どもたちのわくわくどきどきの夢をそだてたい、とまどかぴあ図書館に全国から届いた作品の受賞作品集第一弾。

  • 147頁 A5判並製
  • 4-88344-059-1
  • 定価:本体価格1000円+税
  • 2000/03/31発行
ラバウル日記

旧帝国陸軍の官僚制としぶとく闘いつづけた一予備役軍医の二千枚に及ぶ日記文学の傑作。──降伏時、総司令官から出された責任逃れの「極秘通達」に憤り、英訳して豪州軍に提出。裏切り者と指弾されながらも、同僚を死刑より救う。

  • 725頁 A5判上製
  • 4-88344-047-8
  • 定価:本体価格5800円+税
  • 1999/12/25発行
電撃黒潮隊 挑戦篇 アートネイチャー 石風社 木村栄文 ドキュメンタリー テレビ 九州 沖縄 ディレクター
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電撃黒潮隊 挑戦篇
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電撃黒潮隊 挑戦篇

テレビマンたちの心意気。テレビでは描けなかった舞台裏や主人公たちのその後を追って、ディレクターは今日も走る。ドキュメンタリーは生き物だ! 不況に揉まれ締め切りに追われ視聴率に涙をのみながら、現在を撃ち抜くテレビ屋たちの熱い思い第2弾。

  • 365頁 四六判並製
  • 4-88344-054-0
  • 定価:本体価格1500円+税
  • 1999/12/18発行
医は国境を越えて 中村哲 国際化 石風社 イスラム ペシャワール アフガン アフガニスタン らい ハンセン NGO 中村 哲
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医は国境を越えて
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医は国境を越えて

アジア太平洋賞〈特別賞〉受賞


貧困・戦争・民族の対立・近代化──世界のあらゆる矛盾が噴き出す文明の十字路で、ハンセン病の治療と、峻険な山岳地帯の無医村診療を15年にわたって続ける一人の日本人医師の苦闘の記録。

書評

国際化とは、日本とは、人間とは。

 一九九三年、アフガニスタンの山岳地帯、ダラエ・ヌール渓谷一帯で悪性マラリアが大流行した。駆けつけた日本人チームは村民から大歓迎された。
 キニーネを点滴すると劇的に回復する。一人分二二〇円。資金が底をついた。これを報じた日本の新聞の「人の命が二二〇円」の見出しが波紋を広げ、五年分のマラリア・流行病予算ができたと中村哲さんは喜んだ。パキスタン北西部ペシャワルを拠点に医療活動を続ける人だ。
 渓谷に朝の薄明かりがさしはじめるころ、祈りの朗唱が響き、一日がはじまる。村によっては小学校もあるが、大半の村には一種の寺子屋があって、コーランを通じて読み書きを覚える。親が農業や牧畜で忙しいとき、子どもは放牧や水くみを手伝い、学校には行かない。
 ある団体が日本と協力して「恵まれない子どもたちのため」村に学校を建設する案を携えて相談にきた。中村さんは答えた。子どもたちは「哀れだ」とは思っていない。ヒツジを追い、たきぎを背負う労働も、家族のきずなを強め、共同体の中で必要な協力や生活の技術を学ぶ教育ではないだろうか。
 もちろん、暮らしをよくするための技術や、広く日本や世界を知る知恵を受けることは大切だろう。しかし、あの子どもたちを哀れと見る彼らは、学校にはない、日々の生活を通して自然に教えられる「教育」に気づいているとは言えないと思う。「私はこのての『国際協力』にある種の不信感を抱いている」と中村さんは『医は国境を越えて』に書いている。
 八四年にペシャワルの病院に赴任してから十六年、中村さんはパキスタンの辺境から日本を見続けてきた。国際化とは、日本とは、人間とは。その一言一言が重い。きょう、『医は国境を越えて』の中村さんに第十二回「アジア・太平洋賞」特別賞が贈られる。

  • 355頁四六判上製
  • 4-88344-049-4
  • 定価:本体価格2000円+税
  • 1999/12発行
悲劇の豪商伊藤小左衛門 武野要子 伊藤 小左衛門 博多 石風社 武野 要子 商人 豪商 商都 朝鮮 小屋瀬 近松 歌舞伎 アジア 中世 黒田 藩 禁制 
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悲劇の豪商 伊藤小左衛門
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悲劇の豪商 伊藤小左衛門

東アジアの海を駈けめぐった中世博多商人の血を受け継ぎ、黒田の御用商人として近世随一の豪商にのぼりつめながら、禁制を破った朝鮮への武器密輸にて処刑。鎖国に揺れる西国にあって、海を目指して歴史から消えた、最後の博多商人の生涯

  • 227頁 四六判並製
  • 4-88344-046-x
  • 定価:本体価格1500円+税
  • 1999/11/0発行
 (266件中) 191〜200件目