書評

おばさんシングルズが行く

おばさんシングルズが行く 宮地六美 石風社 フェミニズム アメリカ 英語 老後 エッセイ
四六判並製
4-88344-001-X
定価:本体価格1500円+税
1994/06/10発行
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おばさんシングルズが行く
zeikomi
¥0円


「このおばさんは義のために遊んでいる。
……いいねえ、こういうおばさん」
(高島俊男氏)


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おばさんシングルズが行く
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人生、遊びが最も大切でございます。教育・政治・結婚・老後……。「ずいぶん良くなってきましたけれど、ニッポンにはおかしなコトがまだたくさんゴザイマスヨ」と、ミヤチ教授は今日も快気炎!

書評

「人生、遊びが最も大切でございます」

高島俊男
中国文学者

 このおばさん、年は六十、夫君は十五年前になくなって現在「未亡人」、娘が二人あっていずれもアメリカ在住、ハーフ孫が一人。
 御当人は九州福岡でひとりぐらし、職業は大学の地質学の先生。陽気で、爽快で、純情。遊ぶのが大好きで、釣り、水泳、ピアノ、絵を楽しみ(どれもウデは大したことない)、ドームへ出かけてダイエーを応援する。加えて痛快で元気のよい文章を書く。大学教師なんかさせておくのはまことにもったいない才媛(?)である。
 誰しも考えることは同じと見えて、地元の新聞がこのおばさんに目をつけ、連載エッセイを書かせた。それを二年分まとめたのがこの本である。
 まず、自己紹介部分をご紹介申そう。
 ──〝未亡人〟というものを、私は十五年間やらせていただいとるのでございますが、この〝未亡人〟という言葉は、まっこて意地の悪か言葉でございますな。(……)
 でもねえ、〝未亡人〟になっても、私、寂しくないのでございます。やりたいことが余りにも多いからでございましょうか。〝未亡人〟になってよかったことの一つに、外出の自由がございます。
「明後日、ジャズ聴きにいかない?」「行く、行く」。ジャズは楽しかったですよ。
 癖になりそー。「絵のモチーフ探しに、パリ行かない?」「行く、行く」。海外旅行はよろしゅうございますよ。命の洗濯出来ましてよ。「明日、釣りに行かない?」「行く、行く」。赤と黒の鯛はまっこて美味しゅうございました。
〝未亡人〟は亭主の許しをもらうというチェックポイントがありませんので、話が早いのです。即断、即決で、どこへでも出かけて行くことが出来ます。だれに気がねすることなく、やりたいことが何でも出来る〝未亡人〟という地位(?)に、私は今、大変満足しているのでございます。派手な服装をして、バッチリ化粧して、どこまでも遊びにでかけます。人生、遊びが最も大切でございますよ。──
 いいねえ、こういうおばさん。
 でも大学の先生だからそういうことが許されるのよ、という声があるかもしれない。
 そう、おばさんは選手なのだ。ノーテンキな若い娘の遊びとちがって、このおばさんのばあいは、選手の自覚がある。太宰流に言えば、義のために遊んでいる、というおもむきがある。それが、楽しく愉快なこの本に、切実、というスジを一本通しているのだ。
 で、話題は、弱者の観点から、というのが多い。女、その上「未亡人」、というのはまさしく弱者。それを逆手にとるのがおばさんの戦略であるのは上に見た通りである。
 だから、とかく陰気になりがちなセクハラの話もこのおばさんだとおもしろいよ。
 ──私の職場でも、歓迎会や忘年会など、一年に何度か宴会がございます。(……)
 ある日、二次会で、隣りに座っていたうちの若いもんに例のように声、かけたんですわ。「踊ろう」って。
 彼は立ち上がり、私の肩に手を掛け踊り始めたのですが、私の体とは何と一メートルも間隔を空けておるのです。チーク・ダンスにならんのですわ。「もう少し、くっつけ」と私が注文付けましたらね、彼は一言「せんせ、セクハラです」──

目次紹介- 抜粋 -

1 アメリカで老後について考えた
 アメリカに住みたいわけは、これ  「お母さんも尊厳死宣言書を作っといたら?」  家族と食事をするために、人は生きている  国が違えば法律が違う 一人旅は命がけ ほか
2 セクシュアル・ハラスメントについて考えた
 女が〝立つ〟のはやっぱりヘン  「蜘蛛の巣、お払いしましょうか?」  「せんせ、セクハラです」  女も土俵に上がりたい?  アニタ、我々も続きます  子どもの弁当は子どもに作らせたら?  エッ、まだ丸刈り?  生徒殴るな、ウソつくな  丸刈りがお好きな方は、どうぞ ほか
3 おばさんシングルズ、まだまだ考える
 「常に健やか」なんてとんでもない  電動車いすでどこへでも行くよ  〝老後〟というのはイジワルな言葉でございますね  献体はやめときましょうかね  単純ミスで胃、取られてしまった  〝余った生〟なんてありゃしないよ  「前もってお知らせ頂ければ担ぎ上げてさしあげます」  言いたいことはまだまだたくさん

宮地六美

みやち・むつみ

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宮地六美
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¥0円
みやち・むつみ

1934年山口県宇部市生まれ。
1956年九州大学理学部地質学科卒業。1961年九州大学大学院理学研究科地質学専攻博士課程修了。専攻は地質学の中でも火山層序学、年代地質学など。
1996年九州大学大学院比較社会文化研究科地球自然環境講座教授を辞職。九州大学名誉教授。理学博士。
著書に『アメリカでお墓について考えた』『アメリカで英語について考えた』『おばさんシングルズが行く』『おばさんシングルズの超生活術』『冬はニューヨーク、夏は玄界灘で』などがある。