野村望東尼 姫島流刑記
「夢かぞへ」と「ひめしまにき」を読む

著者:
浅野美和子
判型・頁 A5判上製540頁(口絵カラー4頁+口絵モノクロ8頁)
ISBN 978-4-88344-283-6
定価 4180円(本体3800円)
発行日 2019/04/30

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筑前勤王党二十一人が自刃・斬罪に処せられた慶応元年の乙丑の獄。
歌人野村望東尼も連座。
糸島半島沖の姫島に流罪――
 
野村望東尼は平野国臣ら勤王の志士と交流を持ち、高杉晋作を匿ったことでも知られる幕末の勤王歌人。本書は、望東尼直筆の稿本を翻刻し注釈を加えた流刑日記である。
 
 
「筆者が意図するところは次の三点である。
 一つは原文になるべく忠実に翻刻すること。江戸時代には統一された仮名遣いは無いが、現代から見れば、文章語には共通性があり、どの地方の人が読んでも理解可能であった。その仮名遣いは、いわゆる「現代仮名遣い」と「歴史的仮名遣い」が交じっているように見える。それらは封建社会の特質が文章にも表れているのであって、翻刻にあたっては、それらを現代の視点から勝手に書きかえてはならないと筆者は思うからである。
 二つ目は、難解な言葉に注釈を付けたこと。
 最後に、『夢かぞへ』「ひめしまにき」の成立した時代背景を見ながら、この日記を全体として読み込んだことである」
 
 

目次

一 『夢かぞへ』「ひめしまにき」以前のこと

底本について、および本書の意図するもの
 「勤王」とは何か
 幕府、諸藩内部の改革派
 条約調印をめぐる幕府と朝廷
 薩摩藩・長州藩の動き
 文久の政変
 尊王攘夷・勤王と近代
 皇国観念の台頭

望東尼の周囲の思想状況
 望東尼の半生
 上京とマラリア罹患
 政治に目覚める
 平野國臣・喜多岡勇平と親しくなる
 五卿移転と喜多岡勇平
 喜多岡勇平の活躍と遭難

二 夢かぞへ 慶応元年(一八六五)六月〜十一月
 ゆめかぞへ 水無月の書 七月八月のはじめ
 夢かぞへ (七月) 文月
 夢かぞへ (八月)
 ゆめかぞへ (八月・九月)
 夢かぞへ (十月)
 夢かぞへ (十一月)

三 ひめしまにき 慶応元年(一八六五)十一月〜慶応二年三月
 ひめしまにき 慶応元年十一月二十六日より十一月三十日まで
 ひめしまにき 慶応元年十二月より二年正月十日迄の日記
 ひめしまにき 慶応二年正月一日より正月十日迄の日記
 ひめしまにき 慶応二年正月十一日より廿日まで
 ひめしまにき 慶応二年二月一日より二月十三日まで
 手紙に見るその後の様子

四 姫島脱出
 長州での生活
 高杉晋作を見舞う
 山口に移住
 三田尻に転居

五 和歌作品の検討
 和歌に見る望東尼の思想
 和歌の達成は最高に

六 夢かぞへ 原文
 ゆめかそへ 水無月の書 七月八月のはじめ
 ゆめかそへ 文月
 ゆめかそへ 八月・九月
 ゆめかそへ 十月
 ゆめかそへ 十一月

七 ひめしまにき 原文
 ひめしまにき 慶応元年十一月二十六日より三十日迄の日記
 ひめしまにき 慶応元年十二月より二年正月十日迄の日記
 ひめしまにき 慶応二年正月一日より正月十日まで
 ひめしまにき 慶応二年正月十一日より廿日まで
 ひめしまにき 慶応二年二月一日より二月十三日まで
 ひめしまにき 慶応二年三月一日より四日まで
 ひめしまにき 慶応二年三月四日より十三日まで

あとがき
参考文献

著者略歴
浅野美和子
[あさの・みわこ]

1934年 岐阜市生まれ。
1956年 愛知学芸大学史学教室卒業。3年間一宮市萩原小学校に奉職。
1974年 女性問題グループ「あごら」に参加。女性史、女性問題の研究をする。
1976年 ’78年まで名古屋大学国史研究室の研究生となる。
1981年 愛知教育大学大学院教育学(日本史)修士課程修了。 専門学校、高等学校、大学などの非常勤講師を勤める。

著書
『女教祖の誕生』藤原書店2000年
『ジェンダーの形成と越 境 』 桂文 庫 2003年

共著
『女と男の時空』近世篇 藤原書店 1995年
『尾西市史』通史篇上下 1998年 資料編 2001年
その他論文数編

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