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母の味
三奈木村の年中行事とともに
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筑紫平野の東隅
福岡県朝倉郡
三奈木村に育った
少年の記憶に残る
母の味
そして年中行事――
若い日の母の姿
煮炊きした竃の火
朝早くから漂ってくる
みそ汁の味が
昨日のことのように
よみがえる
今、心に残るのは、子どもたちが主となる村の年中行事に伴うご馳走である。正月は、ほうけんぎょう・さぎっちょ。春は、遠足。夏は、およど・盆綱引き。秋は、おくんち・茸取り。冬は、兎追い・小鳥や鴨撃ち・餅つき等々、数々の思い出が母の味とともによみがえる。それは貧しい農村生活に、春秋の彩りをそえるものであった。
今では、村も少子高齢化によって、年中行事や母の味も消え去ろうとしている。今から約八十年前、昭和初期のあの頃の思い出を、あの日の味を書いてみた。(本文「はじめに」より)
目次
正月
雑 煮 七草がゆ だんだら粥
春
春の味 竹の子寿司 にぎり飯
粽 がめん葉餅 カレーライス
夏
紫蘇飯 どじょう汁 川魚料理
ハヤの甘露煮 川 茸 鱈わたの甘煮
秋
芋名月、栗名月 柿の葉寿司 甘 酒
ガニ飯 干 柿 むかご飯 茸汁
冬
弁 当 蜆 汁 鋤 焼
三奈木砂糖 餅搗き 蕎 麦
日々の食事と三奈木砂糖のこと
著者略歴
1923年、福岡県朝倉郡三奈木村に生まれる。1945年、長崎医科大学附属医学専門部卒、神経精神科医。三奈木に関して、『三奈木村史資料 一〜四巻』、『村のくらし ―筑前三奈木―』、『加藤新吉遺稿集』がある。
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