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虚を注ぐ
土の仕事と手の思索
- 著者:
- 山本幸一
判型・頁 | A5判上製 248頁 |
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ISBN | 978-4-88344-302-4 |
定価 | 2750円(本体2500円) |
発行日 | 2021/06/30 |
土の本源へ
器の機能性や作品性の
呪縛からの解放
私が山幸の作品に感じるもの、それは天与の資質であると思うが、テクスチャアに対する繊細な感覚と清潔さである。平面と局面、方形と円筒の大胆な構成。粘土を切り割くような鋭い切り口、その潔さに魅かれる。
熊本の中心部に屹立する金峰山の中腹から一筋の煙が立ち昇るのが見えると山幸が焼いているなと思う。額の秀でた男が泥をこね、土を焼く。大地の破片を切り取り、新たな大地を作るかのような栗鼠や狸に見守られながら土を焼く。窯の火を落とすとそこには奇妙に重量感のある不思議なものが生まれている。かつて地上に存在したことのないもの、何の役にも立ちそうもないものが生まれている。そんな仕事をしている男の姿が見える。
主要目次
口絵(カラー) 陶作品 個展ダイレクトメール集
本文 「虚を注ぐ」(熊本日日新聞連載「わたしを語る」)
山幸モンタナ通信
山幸窯つれづれ
ダイレクトメール・メモ
山幸作品について 浜田知明・阿部謹也他
口絵(カラー)
山本幸一の仕事
作品展ダイレクトメール
本文
山幸窯つれづれ
器と非器 イタリア・アメリカレポート
シチリアホテル
されど小道具
窯の犬
町家の土間と山下洋輔さん
Mさんのこと
オブジェで脱皮する主
イノシシと人間の攻防
骨壺のことなど
松浦さんの怒りの場面
母の機嫌
山幸モンタナ通信
雪で氷点下
身体に収まりきれぬ
理解は誤解の蓄積
一歩出れば牧場
トレインキルンを焚く
窯焚き終了
なんでも重い
果てしなき日々
美術館で展覧会
レッドロッジ通信
ロックな窯焚き
虚を注ぐ
機能性の縛りからの解放感
線香臭う祖父母の家
続かなかった田舎暮らし
市営団地の記憶
悪童の世界に顔出した文明
懲りない日々
シュークリームのひと
野球漬けだった中学時代
「けんかえれじい」さながら
吉富先生と働さん
「わが身は大海の中にある」
ヨット部から大学騒動へ
古くさい権威主義
目まぐるしく過ぎた5カ月
私の学校「カリガリ」
風俗街近くのバイト
「山下洋輔トリオ」を呼ぶ
イベントのたびに変わる錠
浅川マキの「こだわり」
小石原の窯元に弟子入り
崩れゆく民芸の根幹
衝撃だったカルロ・ザウリ
イタリア行きと資金集め
優秀な陶芸家が集まる地に
その作品はおまえのものか
始まったファエンツァ生活
帰国、そして金峰山へ
慌てない腰の据わった男
「屯泥の会」
「ハマダ・チメイですが」
長く続いた「アトリエ会食」
「オドラデク」のような存在
器とオブジェを作る先達
悩みの種
土の質感の美しさと面白さ
本だけが生き続けていた
見知らぬ土地に行きたい
「おまえは修業が足りん!」
私にとっての旅だったのか
ダイレクトメール・メモ
山幸の人と作品【素描・追悼】
編集付記
1947年 福岡県、大牟田市に生まれる
1972〜74年 福岡県朝倉郡小石原 梶原二朗氏に学ぶ
1975〜76年 ファエンツァ(イタリア) カルロ・ザウリ氏に学ぶ
1976年 熊本市河内町(金峰山)に山幸窯を開く
1979年 熊日画廊(熊本市)初個展。以後、八代市、福岡市、広島市、京都市、東京、沖縄、韓国、米国等で開く。
2020年5月7日逝去。享年73歳
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ファエンツァ国際陶芸展(イタリア)入選(1976年)
九州・山口陶磁展 入賞(1989年)
日本陶芸展 入選(1989年)
西日本陶芸展 入賞(1990年)
国民文化祭・おおいた「野外陶芸展」実行委員会会長賞(1998年)
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山幸窯では陶芸を志す若者を受け入れ、延べ10人ほどが巣立っていった。