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三池炭鉱 宮原社宅の少年
三池争議の吹き荒れた
昭和三〇年代の大牟田
炭鉱社宅での日々を
遊び盛りの少年の眼を通して
生き生きと描く
「やめとったが、よかっじゃなか」
「大丈夫。してみるたい」
と言いながら、二人で台車の向きを直角にかえた。押せば台車は下り始める。少しためらった。しかし、やってみたいと思った。タカちゃんもその気になった。二人で台車を押した。台車はまるで生き物のように静かに自走し始めた。いっしょに台車にとび乗った。台車のスピードが上がっていく。またたくまに予想以上の速さとなった。トンネルの入り口が近づいた時、タカちゃんがさけんだ。
「危なか。ノリちゃん、おりれ!」
そしてタカちゃんはとびおりた。ところが私は乗ったまま降りなかった。かならずどこかで停止する。そういう仕掛けになっていると信じていたからである。(「懲りない少年『台車吹っ飛ぶ』」より)
子ども時代の回想・証言、宮原社宅で育った自分史が、そのまますぐれて希少な地域史となり、三池争議をはさむ激動の社会史の側面をもっている。
宮原社宅
一丁玉/宮原社宅/あくすい川
三十一棟のタカちゃん
宮原幼稚園/十円うどん/ハインヅカ 他
懲りない少年
下り坂はブレーキなしで/台車、吹っ飛ぶ
/はぜまけ事件、出血縫合 他
遊んで食べて手伝って
「かてて」/サインはカーブ/引率映画 他
世界の揺らぎ
運動会の日に/中原重俊先生/高巣巴先生
/あたまんようなると自殺するげな 他
「外」の世界で
雄辿寮/錆びない画鋲/「外」 他
やがて来る日に
二行の真意/闇への案内板
ふたたびの大牟田
ピンポーン/茶碗蒸し/「ハインヅカ」の謎
/時の記念日/父さんの贈りもの
1946年生まれ。大牟田南高等学校卒業。東京学芸大学を卒業したのちに福岡県内の聾学校および養護学校に勤務。現在は福岡県立大学非常勤講師(人権教育)、福岡県人権・同和教育研究協議会会員。