ネット書店で注文
花の語らい
その日、その日
目につく花を描いた
花は記憶を呼び覚まし、
思い出は花とともにあった
幼い日、母親の実家で沈丁花の陰に隠れ、むせかえる香りに包まれたことがありました。病気の祖父を見舞う里帰りで、従兄たちと〝かくれんぼ〟をしていたのです。沈丁花の季節を迎えるたびに、初めて嗅いだ香りと祖父のことを思い出します。
その頃、男の子の遊びにコマ回しがありました。町の八幡宮の境内に集って遊ぶのです。なかなか、上手に回せなかった私は何度も一人で練習しました。
柿の花の散っていた日のことです。
――コマが回りました。家に向って走りました。すこしでも早く知らせたかったのです。
散り敷く柿の花と、初めて回るコマ。忘れられない記憶のひとつです。
折り折りの花は、それにまつわる出来事と重なって記憶されるようです。
季節の花々は記憶のキーなのです。
春
蕗の薹 猫柳 沈丁花 連翹 馬酔木
烏野豌豆 染井吉野 白木蓮 草苺 著莪
海老根 石竹 花筏 山芍薬 三ッ葉下野
夏
蔓日日草 苧環 菖蒲 栃木 薮卯木
忍冬 雪の下 初雪葛 野薊 河原撫子
月見草 睡蓮 つるバラ 橙 博多百合
桜桃 矢車草 蕺草 金糸梅 梔子
紫陽花 夏椿 野萱草 桔梗 無花果
夾竹桃 露草 日日草 凌霄花 浜木綿
松葉牡丹 萩 木槿 鶏頭 吾亦紅
千日紅 唐辛子 白粉花 芙蓉 金虎の尾
風知草 鈴虫花 瓢箪 莢蒾 秋海棠
秋
布袋葵 野葡萄 不如帰 彼岸花 石榴
秋冥菊 野菊 浜菊 烏瓜 蔦紅葉
紫式部 梅擬 姫?葉 臭木 楠
菝葜 白だも 茶の木 南京櫨 石蕗
千日小坊
冬
山茶花 八手 山の芋 冬苺 南天
寒椿 匂い椿 唐橘 万両 枇杷
青木 真弓の実 千両 水仙 侘助
臘梅 冬牡丹 満作 福寿草
1935年福岡県生まれ 児童文学誌「小さい旗」同人 絵画グループ 五架会会員 朝日西部美術展、西日本美術展、宇部ビエンナーレなどに出品
挿絵「馬でかければ」(作 みずかみかずよ 葦書房)
「小さな窓から」(作 みずかみ かずよ 石風社)
「豊島与志雄童話集」(海鳥社)
絵本「南の島の白い花」(作 みずかみかずよ 葦書房)
「雪原のうさぎ」(常星児 作 水上平吉 訳 石風社)
「青の洞門物語」(松林たづ 作 海鳥社)
「花の里駅へ」(坂井ひろ子 作 西日本新聞)