彼女の名前は「三毛(サンマウ)」。もちろんペンネームだ。由来は、3毛(「毛」は中国語のお金の単位で「元」の下の位)ほどの価値しかない取るに足らない者という意味だとも、彼女が人生で初めて読んだ本である漫画『三毛流浪記』の主人公の孤児の名にちなむとも言われる。残念ながらすでに故人だが、今もなお華人文化圏では知らない人はいないほど知名度の高い作家だ。

 彼女は、「三毛」になる前の自分を「二毛」と称した。毛が1本足りない未熟者の謂いである。私たちはひょんなことで三毛の作品と出会い、それをなんとか日本語にできないかと日々悪戦苦闘している「二毛」の一人だ。これからあと1本毛が生えてきてくれるかどうかはまことにおぼつかないが、「二毛」は「二毛」なりの「悪戦苦闘記」を綴っていこうと思う。(妹尾加代 間ふさ子)

石風社より発行の関連書籍
関連ジャンルの書籍