この冬の初め、夏から続いた微熱とようやくお別れしたと思ったら今度はジンマシンとのお付き合い。アレルギー性ということだが、卵とか魚の内臓とかカキ(ここ数年食べてない)カニ(数十年ご無沙汰)とか特に原因はない。逆に言えば予防のしようがない。昼間はなんとか紛れる。夜中、目が覚めて眠れないのがどうにもならない。全身のあちらこちら、かゆいという感覚、かきむしる痛みとも痒みとも何ともつかない情感、一種自虐的快感なのだから、もう、たまらん。手の届かない背中の痒みに震えがくる。
おかげでいつになく仕事が進んだ。私の根っからの得意技のボーと何もしないでたたずむことができない。痒みを忘れるためにちょこまかと動き続けるしかない。ほうれん草の、そして赤そら豆の種まき、カツオ菜、山東菜、チンゲン菜の移植、柚子と八朔の収穫、春菊のビニールトンネル、柵の補修…物書きも読書も。何かに集中することが肝心なのだ。食にも。五十回から百回噛んだ。何だか胃の調子もおかしくなりそうだったから。柿やリンゴや生の大根を皮ごとかじり徹底的に噛みしめたのはいい気晴らしになった。
1か月ほどが過ぎて、盟友が送ってくれた漢方薬・消風散のおかげで何とか収まった頃、11月26日から1週間、絃太君(28歳、栃木県から)と暮らした。植物油と小麦と砂糖とミルクがだめということで、色々と料理の実験ができた。まず加工食品はアウト、油はラード、粉は製粉機で挽いた米粉、醤油は少量ならセーフ。米粉のお好み焼き、もち米粉の団子汁、米粉をまぶしオーブンで焼いたコロッケ、絃太君作のルーも小麦粉も使わないカレー(香辛料は彼持参)等々。余計なものを食べないからか、私と違っていたって健康で、寒い朝もきっちり7時から雑木や枯れ木やツルを切ったり、柚子の収穫、玉ねぎの移植…毎夕、せっせと薪を切り、五衛門風呂を沸かしてくれた。
結局、秋冬野菜はほとんどうまくいった。人参、大根、小松菜、カツオ菜、ほうれん草…猛暑・酷寒でもなんとかなりそう。ただし天候が予測不可能で来年はどうなることか。9月から10月の播種の時期が一番のポイントだ。残暑が厳しい時は無理しない。失敗したら早めに蒔きなおす。2度も3度も。もちろん連作は避ける。畑は起こさない。刈った草や枯草や鶏小屋の完熟肥で覆う。同じ作物を少しずつあちこちにまけばどれかはできる。白菜は1回目の苗づくりは虫に食われ惨敗、次は育ったが季(とき)遅しで巻かず、青菜になった。
去年までは1mほどの高さの台の上で育てて虫を防いだのだが。
年が明けて、特に1月半ば以降、寒さがこたえる。布団を出るのが辛い。それでも5時過ぎには起きる。辛いけどこの冷たい緊張感が好きだ。旅に出る夜明け前のような。それに微熱も痒みもないのがありがたい。夜中に2回は起きるが、深く眠ったと実感できた朝は身が軽い。外から玄関の硝子戸を開けるとモモ(雌犬3、4歳)が飛び出てくる。闇を駆け登り、闇に消えてゆく。この所、雑草園内の柵近辺をよく駆け回り、嗅ぎまわる。この1年、野生動物の侵入がなかったのは、柵とやはりモモのおかげだろう。何しろ黙って立っていればいかにも猛犬、走れば馬だ。どちらかというと臆病、繊細で人間大好きなのだが。その前、さんざんに荒らされたのはハッサン(昨夏15歳8か月で永眠)が衰えたからだ。改めてそれまでの10数年のハッサンの尽力に感謝感謝。
白々と明け、やがて日が差すと、野や畑一面の霜が無数の針の光を放つ。氷の針は見る見る溶け、寒さに疲れたそれでも青々と茂る野菜たちが雑草園のそこかしこに浮き上がる。薪を拾いに園の外に出ると、逆に雑木林の荒廃が際立つ。鹿が新芽を食い尽くし、草は生えず、頭だけ緑の残ったひょろひょろの樹が目立つ。2、3分も歩くと、目の前にこの世の果てのような世界が現れる。産業廃棄物処分場のごく一部。山全体を根こそぎ除いた巨大なすり鉢の底に有象無象のゴミの山が捨てられ、今は全面に覆土、まるで砂漠だ。
1月22日、その嘉麻市熊ヶ畑の産廃場の裁判の日も冷えた。福岡市六本松の地下鉄駅前に、寒風に飛ばされそうな横断幕を数人で支えて立ち、ハンドマイクで道行く人々に産廃場の愚かさ、危険性を訴えたが例によって反応なし。
この産廃場の約14倍拡張取り消しを求めてもう10年以上になるが、被告の業者・県そして裁判所側のおっしゃることはほとんど変わっていない。きわめて乱暴に要約すれば、「原告住民に現在明らかな被害が出てないからいいじゃん」ということになるか。産廃場の地下には旧炭鉱の坑道が縦横に張り巡らされ放置されたままだ。その坑口まで残っていた。今はどうなっているか私たちには全くわからない。その土むき出しの地に約140万㎥もの膨大なゴミを何年も何十年も捨て続けて、地下水が汚染されないほうが不思議だろう。
ここだけの話ではない。全国各地の山里に、生命の源に、膨大なゴミを捨て続けている。これは明らかに国の政策だ。大地からコンクリートへと民族大移動を進めたことも、農林業の衰退・消滅も、地域社会・生活社会の崩壊も。熊の出没も、鹿や猪による山林の荒廃も根は同じだ。現政権には農業を、それも米作りを立て直す気はない。「いいじゃん、安い輸入米があるんだから。トランプ大王もお喜びになるだろうし」この生命の根っこの破壊が、水を、食糧をどうするのかが、今度の選挙でも全く問われていない。確かなことは、国民の生命、国の大地を守るという基本の基本をないがしろにする、現自民党政権は最悪だ。降りてもらうしかない。
1月末、下界より少し遅れて寒空に梅が咲いた。いつものことだがまるで枯れ木に舞う雪だ。でも近寄って見ると、枝枝はつやつやと生きている。
完 2026 初春








